清泉・夏子物語

清酒「清泉」の醸造元、久須美酒造の所在地は名水の里として知られる長岡市の旧和島村。
「1985年に環境庁が全国の美味しい水を調査した際、新潟名水36選のひとつに久須美酒造の仕込み水が選ばれました。
敷地内にある井戸から湧き上がる水は、樹齢200年から250年ともいわれる老杉に覆われた裏山が水源の、きれいに澄んだ軟水である。
昔から「清水屋」の屋号で呼ばれ、自家湧水に恵まれており、代表銘柄『清泉』(きよいずみ)の名もこの自然水に由来します。
裏山は久須美家の所有地でもあり、酒造りに必要な良質な水は山の杉を育て守ることが不可欠で、代々の杉山との深い関わりによって名水は育まれた。

久須美酒造の名を一躍世に広めたのは、幻の酒米「亀の尾」の復活劇。
この酒米は明治時代半ば、庄内地方の篤農家・阿部亀治が発見し、育成され、「不世出の名品種」として戦前は作付面積を誇ったが、病害虫に弱く、倒伏しやすいなどから徐々に姿を消していった。
そんな折、久須美酒造6代目・久須美記廸氏は、越後杜氏の長老から「亀の尾で造った吟醸酒が忘れられない」との話を耳にする。 「その米でぜひ酒を造りたい!」との想いに駆られ、6代目の「亀の尾」の種籾探しが始まった。
時代は地酒ブームのさなかだったが、日本酒の将来を思えば何かせずにはいられなかったのだろう。 1980年、苦労の末に手にしたのは穂にしてわずか10本、約1500粒の種籾だった。
この貴重な種籾を元に、生産農家でもある蔵人と二人三脚で3年がかりで復活させ、「亀の尾」を使った純米大吟醸『亀の翁』は誕生した。1983年冬のこと。夢にまで見た幻のコメは蘇り、香り高い酒となったのだった。
この酒はその年の三大鑑評会で金賞を受賞。やがて「夏子の酒」の題材となり、多くの日本酒ファンに感動を与えた。さらには日本酒の造り手を生み、飲み手を増やすなど、日本酒業界に残した功績は誰もが認めるところだ。

刈り入れ前の穂を垂らす9月上旬「亀の尾」



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